禁断の魔術 ガリレオ8

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年10月15日発売)
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感想 : 680
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7の「虚像の道化師」で、今度はもう少し長いものを読みたいと思っていたら、本作は、短編というよりも中編。しっかり描き込まれていて非常に読み応えがあった。
湯川がどんどん人間としての厚みをましてきていて、第4章の「猛射つ」では、長編のときのような人間臭い一面を見せている。
科学者としての苦悩が伝わってきて、心が引き絞られるようだ。
「曲球る」や「念波る」でも、科学者としての対応は崩さないままで、相手を救う(結果的に)ような行動をとっている。決して感情に溺れることなく、しかし相手の気持もきちんとフォローできるような行動がとれるところが湯川の美点だと思う。私はこういう、感情に溺れないタイプが好きなのだ。
帯に「湯川が殺人を?」とある。この言葉の意味を、読後しみじみとかみしめた。実に深みのある問いだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新刊
感想投稿日 : 2012年10月13日
読了日 : 2012年10月13日
本棚登録日 : 2012年10月13日

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