最初の「ラブレス」を読んだ時は、「なんだこれ」と思った。物語の意図が全然見えなくて、とても中途半端な感じがしたからだ。
昔話を下敷きにした物語だと思って読んでいたので、そのあまりの離れっぷりに戸惑ってしまったのだ。
思わず先に解説を読んでしまった。そこでようやくそれぞれの短編が一つの意図の元に集められているということを知る。
そこからもう一度本編に戻って読み進めると、だんだん様子がわかってくる。
つまりはこれらは、「記録された語り」なのであると。
最後の「懐かしき町の川べりの物語せよ」は、胸の奥で不穏な音がしてくるような、しんと静かになってしまうような話だった。モモちゃんのあのとらえどころのないキャラクターはなんなのだろう。まるでブラックホールのような感じ。
心のなかを乾いた風が吹き抜けていくような、寂しい読後感だった。
そして、最後まで読んでもう一度「ラブレス」に戻った。
そうか、そういうことか、とようやく得心がいく。解説もちゃんと意味が染み通ってくる。
なんて、哀しくて途方も無い物語なんだろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
新刊
- 感想投稿日 : 2012年5月22日
- 読了日 : 2012年5月22日
- 本棚登録日 : 2012年5月22日
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