背信の科学者たち―論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか (ブルーバックス)

  • 講談社 (2006年11月21日発売)
3.63
  • (10)
  • (14)
  • (25)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 228
感想 : 32
3

本書は、科学者たちによるデータ捏造、盗用、欺瞞がどのような経緯で、どのように行われたか、またなぜそのような行動にいたったのかについて、深い洞察を与える。本書によると、プトレマイオス(星の運行データの盗用)、ガリレオ(データ捏造)、ニュートン(データ捏造)といった超一流の科学者たちも、このような行動に手を染めていた。また、何人かのノーベル賞受賞者や、ノーベル賞候補もやってしまっているようだ。野口英世にいたっては、彼の論文のほとんどは捏造されたものであるといっても過言でないほどである。残念ながら、古今東西を問わず、このような欺瞞は横行していると認めざるをえない。これほどのレベルの科学者でも、欺瞞の誘惑に勝てないのだから、実際には非常に多くの欺瞞が科学世界の中で歩き回っていることは、想像に難くない。返す返すも残念である。 そもそも科学者とは、自然を探求することに対して無上な喜びを感じる人たちである(と思う)。にもかかわらず。多くの科学者、が、名誉、金、地位のために、己の真実への探究心を裏切った。合理のみが生きる世界から、不合理がまかり通る魑魅魍魎の世界へと己の住む場所を変えてしまった。著者曰く「一流科学者といえども、モラルは一般人と同じである」。確かにそうであろう。科学者のモラルについて厳しく言及した湯川秀樹の慧眼に感服するのみである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年10月23日
読了日 : 2008年1月30日
本棚登録日 : 2018年10月23日

みんなの感想をみる

ツイートする