人間この未知なるもの (知的生きかた文庫 わ 1-8)

  • 三笠書房 (1992年5月1日発売)
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本棚登録 : 274
感想 : 17
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ノーベル生理学賞受賞者である著者による、古典的医学、生物学、および、彼の政治的思想の解説書である。医学、生物学の解説は、70年のときを経ているため信じるに足りないことも多く、特に読む必要はないと思われる。 本書での特筆すべき点は、後者である政治的思想である。淘汰を受けない人類(彼は、西洋人についてのみ語っている。当時の人種差別当たり前の時世ではしかたないだろう)の劣化、退化を非常に危惧している。また、女性の社会進出による少子化や生育の劣化を予言し、「女権拡張運動の推進者たちは、男女両性が同じ教育、同じ権利、同じ責任を持つべきであると信じるようになった。・・・女性は男性を真似ようとせず、その本質に従って、その適正を発展させるべきである。文明の進歩の中で、女性の担う役割は男性のものよりも大きい。女性は、自分独自の機能を放棄してはならないのである」と。まさに、わが意を得たりと感じる(というと、田島陽子的御バカさんが女性蔑視だというだろうが、これは蔑視でも差別でもない)。 この本に対しては、人種差別による選民思想を科学的に裏付けているというような批判もあるようだが、思想の時代的背景を考えると、そのような批判は当たらないと思う。むしろ、現代社会の行き過ぎだ平等主義、人権主義に対する警鐘と受け止めるべきであろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年10月23日
読了日 : 2009年3月16日
本棚登録日 : 2018年10月23日

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