巻七 (源氏物語)

著者 :
  • 講談社 (1997年10月24日発売)
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感想 : 7
5

不義を犯したびびりの柏木が、びびりすぎて死んでしまった。一方、女三の宮は、源氏に目も合わせらないようになり、男女の仲も絶え、出産後、出家してしまう。自分で望んだことではないのにこんな目にあって、なんと可哀想。
この物語は、そもそも女性が望んだわけでもないのに(特に結婚に関して)…というのが多いですよね。時代的に、実際にそうだったのでしょうし、そういう時代が長かったので、時代を経ても共感をよんだのでしょうか。男の登場人物にしたって何事も自分の思いどおりにはいかないですけど、女の登場人物に比べたら、悩みかたがちょっと甘く描かれてる。死に様が描かれるのも、女の人多いし。出家も女の人多い。やっぱり、女の人の物語なのだな~と思います。
女って割に合わないのよね、とか、窮屈なのよね、とか、なんで生まれてきちゃったんだろ、なんでこんなに思いどおりにならないんだろとかいう気持ち。多分、物語のはじめから空蝉のあたりからあったと思うのですが、そんな感情が、いろいろな恋愛沙汰を通じて繰り返し繰り返し出てきて、柏木の不義あたりで、どーんと、大きな波になって源氏に降りかかってきた感じです。

この巻には夕霧の恋も描かれていますが、こちらは源氏の恋より、「身近にありそう」な浮気でした。夕霧って、真面目でいいお父さんなのかな、と期待していたけど、いやいや、そんな人の浮気は浮気じゃないんですね。相手の女二の宮も迷惑がっているのに、一人で突っ走り、さすがは源氏の息子、無理やり契ってしまう。あんたもか…、とちょっとがっかり。でも、後には雲居の雁と女二の宮と律儀に半々に通うことになって、その辺は、やはり真面目か!と笑ってしまいました。

女二の宮の母が、夕霧のことで悩んで病を重くしてなくなってしまうのですが、それと、無理強いの結婚ということが無ければ、笑ってしまうようなお話です。でも、リアルで考えると、夕霧はストーカーより怖いかも。初めは亡き夫の友人というていで、よく訪ねて来た人が、結婚を無理強いして、人の家まで上がり込むどころか改装までしちゃって居座るわけですから。うわー、ホラーですね。女二の宮の怯えるのも、それはそうでしょう。うわー。怖いですね。

紫の上がとうとう亡くなるお話や、源氏が亡くなった紫の上を偲ぶ帖は、しんみりしました。自分が死ぬときってどうかなと想像したりして。
寂聴さんの源氏のしおりには、出家すると夫婦の営みができなくなるから、源氏は紫の上の出家を許さなかったと書かれていたような気がする。けど、あんなに弱っている紫の上とそんなことできるかな。源氏が出家をしなかったのは、他の女君たちとそういうことできなくなるからかもしれないけど、紫の上の出家を拒んだのは、ちょっと違うのでは。多分、同じ現世という土俵に一緒に乗っていたかったのでは。甘ったれ源氏。それだけ大好きだったんだね。

そして、源氏もいつの間にかお亡くなりになってる。とうとう主人公の退場です。

最後に薫の悩みと匂宮の恋(按察使の大納言の家庭事情)に触れて、この巻は終わり。
また恋の物語が始まるのか~。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年4月4日
読了日 : 2024年4月4日
本棚登録日 : 2024年3月27日

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