悪党 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年9月27日発売)
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感想 : 140
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自分の身内が事件に巻き込まれ亡くなり、その犯人は捕まったが少年犯罪法で守られ、罪を見つめる間もなく社会に復帰していたとしたら貴方はどうしますか。

その人物を追う手立てを持っており、同じ境遇の人物達の行動を意志とは関係なく自身が左右し、様々なエンディングを見届けた上で、果たして自分ならどうするのだろう。

許すとして何を持って「許す」事が出来るのか。更生していたら?どんなに今が素晴らしい人間でも最愛を殺した人物に変わりはないのに?
人を殺すのが「悪党」の定義としたら、復讐は自らを「悪党」に陥れる行為となるのだろうか。

.... さて、自身に置き換えても答えが見えない複雑な道を彷徨いしかし確実に進んで行く佐伯の行く末を
本来なら実行できるはずのない「他の人だったらどうするのだろう」を盗み見するような後ろめたさとずるい心で読み進め、完全に物語に感情を取り込まれた私の目の下には可愛い可愛い熊さんが二匹。

何とも答えの無い難問だ。「入れ物」を壊すにしても「心」を壊すにしてもそれには物凄いエネルギーと執念が必要であり、その材料が完全に整っている状態でも苦悩する。つまり「理性」が働くのだろう。愛を奪われ それを恨み そして復讐に繋がる心に理性が働く定義がそもそもおかしいとも感じるし、
だからといって自分がその舞台に立ったらおそらく悩み 苦しみ 佐伯と同じ心境になるのかとも思う。

この作品はたくさんのゴールがあるのだろう。彼がどの道を進んでも結局私には答えは見つからないだろうし、これは私の物語ではなく佐伯修一の物語だ。他人事みたいでなんだか嫌だけど、彼が選んで進んだ道は「幸せ」もしくは「安心」であると良いなぁ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本作家
感想投稿日 : 2021年2月10日
読了日 : 2021年2月10日
本棚登録日 : 2021年2月10日

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