神のロジック 人間のマジック (文春文庫 に 13-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年9月5日発売)
3.63
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本棚登録 : 976
感想 : 129
3

家族の元から離され、学校(ファシリティ)にて閉鎖的ながらも平穏に暮らす多国籍な六人の子供たち。
施設の職員である校長(プリンシバル)、寮長(RA)、食事番のミズ・コットンと共に
授業と実習の日々を送る中、彼等は各々の「自身が置かれた環境の真相」を推理してゆく。まるで実習(ワークショップ)で行う探偵ごっこの延長のように。
ある日、疑惑と平凡が共存する日々に一人の新入生が加入する。そこから急速に崩れ出す日常と現れる真相。
この学校(ファシリティ)の存在とは。彼等の共通する記憶の欠如が示す意味とは。
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ベタながらもそそられる設定。と言えどこれは読み終えたからこそのあらすじであり、
今回はなんの事前情報も無しで手に取ったので前半はちんぷんぷんかんぷんぷん。
半分は学校(ファシリティ)での六人の子供たちの健気で活発的な日常描写。
複数の謎と伏線は設置されるものの、果たして向かう先が悲劇なのか、喜劇なのか、はたまた永遠の平穏なのか。やれ全く想像出来ず(想像の放棄)本棚整理の使命感のみで読み進めた本作品。

結果から言うと
前半ページに二日かかり、後半ページは一時間での読了。そうです、後半からの読了スピードはベン....そろそろレパートリーを増やしましょう。ウサイン・ボルト。

テーマは〈ファンタジー〉
黒い物を黒と言えど、10人中9人が白といえばそれは白となる。
「この世の中の全ては嘘なのよ」
主人公マモルの母の言葉を借りるなら、私達の安定(と思っている物)そのものが 思い込み、すなわちファンタジー で成り立っているのかもしれない。
この 思い込み の不安定さを見事にミステリーとして成立させた本書は前半に設置したハードルを軽々と飛び越えて行った。
しかし敢えて言うなら、前半の丁寧な土台作りの割に後半のスピード感には少し粗を感じる。
粗と言うと語弊があるが、前半と同じ割合で後半のスケールを閉じ込めるのは少しばかり勿体なく感じた。
二日と一時間だもの、単純計算でも48倍のスケールでないと割に合わない(笑)

この勿体無さと着地点のボヤーっとした感じは私の好みでは無かったが、
ほぼノーガード状態の頭では十分に楽しめた。

ファンタジーの共同錯誤、異なる思想を持つ物は異教徒。「宗教戦争」の始まりだ。
これは現代の至る所で勃発している、と私は思う。自身のファンタジーを脅かす存在に対しての敵対心には言葉は悪いが異常さを感じてしまう。

いきなりの語彙力爆弾を投下するが、
やっぱ平和が良い。平和が理想であり私のファンタジーだ。威圧に額の筋肉使うより、笑顔でほっぺた酷使して皆で仲良くリフトアップしたいものである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本作家
感想投稿日 : 2021年9月10日
読了日 : 2021年9月10日
本棚登録日 : 2021年9月10日

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コメント 2件

りまのさんのコメント
2021/09/12

NORAさんのレビュー、いつもながら、サイコーです。好きです。

NORAxxさんのコメント
2021/09/12

あふん。
りまのさんからコメント来るとテンション上がっちゃいます。いつもありがとうございます‪(っ ¨̮ )╮=͟͟͞͞‬ 好

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