マイナス50℃の世界 (角川ソフィア文庫 N 501-1)

著者 :
  • 角川学芸出版 (2012年1月25日発売)
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感想 : 56
5

バナナで釘が打てます。濡れタオルを振り回すと凍る……。自分の”寒い冬”の概念がことごとく覆されました。
滑って転ぶ、しもやけになる、車がスリップ等が、寒い国では日常茶飯事。
子どもは、かまくらを作って、雪合戦や雪だるまを作って遊ぶのだろうと、この本を読むまで思い込んでいました。

んがっ!全然違うのです。マイナス五〇度以下の世界おそロシア☆
とにかく世界観が違います。まるで氷魔法の使えるファンタジーな世界。
本を読みながら『マジで!?ひぇ〜』と何度も声にだし、たまげました。

あまりにも寒いと、雪は粉のようで、道路も固いので滑らないのだそうです。
スケートしたり、雪合戦は春先の遊びで、ある程度気温が上がり、湿気がないとできない遊びなのだそう。車が滑って危ないのも春先なんだとか。

マイナス五〇度の日は、無闇やたらに金属類に触ってはいけない。
瞬間やけどで皮ふがくっついて取れなくなっちゃう!
あまり時間のかかる処置をしていると、その間に凍死の可能性があるので、最短のことをやるみたいで、恐い話がひとつ載っていました。

マイナス五〇度以下になると、飛行機が飛べないことは、はじめてしりました。
なんでも機体の水分が氷結してエンジンの動きがにぶり、機体が重くなるので墜落の恐れがあるとか。
南極よりロシアのほうが寒いようですが、だから探検は犬ぞりだったり氷破壊する船なのかと、やっと理解しました。

自然の製品しか使うことができず、マイナス四〇度以下でプラスチック製品を持ち戸外にでると、瞬間に凍って粉々に崩れ去るそうです。

うぉーっ!まるで魔法のようです。
生活の細かい描写まではなかったのですが、きっと私の生活と全く違うものがあるんだろうなぁと強く感じました。

本書はヤクート人のことが書いてありますが、温厚なヤクート人のヤクート語には、あられもない言葉がほとんどないそうで、喧嘩するときはロシア語を使うそうです。
これには、大爆笑しました。狩猟民族なのに、大人しいというところもほのぼのしています。狩猟民族の概念も覆されました。

こんなに極寒なのに、マイナス三〇度のモスクア等より過ごしやすいんだとか。
空気に湿気があると、風が吹いたときに、より寒いそうです。

そして、そして!さらにマイナス六五度以下になると、ちょっと具合の悪い鳥などが落っこちてくるそうです。
小さな点に見えるぐらいの空を飛ぶ鳥のフンが肩に落ちたときに、強力なGを感じたことのある私は恐怖に震えました。
大きな氷が空から落ちてくるようなもんだ。恐いわー。

巻末の椎名誠さんの解説も面白いです。
飛行機も大体みたいで、シートベルトがあるところとないところがある。壊れたらそのまま。
墜落したら全員死ぬんだからそんなの気にしないという考えを読み、その思い切りのよさについ爆笑してしまいました。

黒い馬で走っていると、いつの間にか白馬に変わってる!
馬のかく汗が凍るので、自然と変身してしまうそうです。

わーお!なんとファンタスティック!
凄く夢中になって読んだ一冊です。
写真もたくさんあって、わかりやすい。薄い本なのですぐに読み終わりますが、大満足の内容です。
やっぱり、自分が知らない世界のお話って興味深いですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年1月10日
読了日 : 2013年1月10日
本棚登録日 : 2013年1月9日

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