本作はシュヌア領視察の話、弓貴の代王の話、そして最終章の3つに分けられるのかな、と思います。
シュヌア領視察では、ソナンが輪笏で行っていたように領地を視察し、その問題点・課題を見つけ出すところからスタート。領内の問題をきっかけとして、トコシュヌコ全体の問題も見えてきて、この解決アクションがストーリーの軸になるかと思いきや、ちょこっと釘を刺して終了。改善は不完全なままで、なんだかハンパな印象を受けたのですが、これが最終章への布石になってるんですね。読み終わった今は納得な内容。
続いて弓貴の代王の話。まさかここでナナとの再会があるとは予想してなかったので超驚きました。弓貴では夫婦だったことがバレないよう、トコシュヌコで夫婦になるための大作戦がスタート。王族とのコネのある豪商ナーゲンの登場という超幸運もあり、めでたしめでたしとなりますが、それまでの過程は二人の関係がバレないか終始ヒヤヒヤしてました。また、改めて二人がお互いどう思っているかを再確認できたことも嬉しいポイントでした。
そして最終章。序盤に分かったトコシュヌコが抱える問題に対し、クーデターが計画されるという驚きの展開。クーデター後、そのままナナと父親を連れて弓貴に脱出するという流れは「主要人物みんな幸せになってほしい」という想いを実現するには(難易度は高いですが)最適の形だったのではと思います。執事のヨナルアやトコシュヌコのその後は気になるし、出来すぎな展開にちょっと都合のよさを感じつつも、個人的には納得してます。
最後は六樽とちょっとこじれてしまいますが、最終的には赦された……んですよね? 処刑されちゃうのか……とガッカリしかけてたので、最後のページの「六樽様に赦されて、輪笏の督としてふたたび活躍した」という一文を読んで(「えっ」と思ったので、この部分だけ2度・3度と読み返しました)ほっとした気分で本作を読み終えました。
シリーズを振り返ってみると、ソナンの第一印象は最悪でしたが、2巻以降はソナンが真面目に民や周囲の人たちの幸せを願い(できるだけ正攻法で)あらゆる手段を講じようとする姿と覚悟に惹かれました。その点は「瞳の中の大河」「黄金の王 白銀の王」にも共通している気がしていて、同じような読書体験・感覚を味わえたように思います。もし沢村凛の新たなファンタジー作品が出たら、序盤どんなに落胆しても最後まで希望を捨てずに読み切れる自信がつきました(笑)
- 感想投稿日 : 2020年11月2日
- 読了日 : 2020年10月29日
- 本棚登録日 : 2020年10月29日
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