ねずみに支配された島

  • 文藝春秋 (2014年6月13日発売)
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一般に生態系の破壊というとき、著者の前作にある「頂点捕食者の不在」よりは、本作にある「外来種の侵入」の方がよく知られるところだろう。ネズミ、ネコ、イタチ、キツネ、ヤギ、様々な動物が、人間とともに世界へと広がり、人間とともに少なくない影響を与えてきた。なかでも特に、島に与えたそれは甚大であったといえる。これまで島は、大陸から大洋で隔てられ、固有の進化を育んできた。島の面積こそ、地球の陸地の5%を占めるに過ぎないが、陸生の種の実に20%は島で生まれたのである。にもかかわらず、絶滅の大半も島で起きており、これは人間も含めた外来種によるところが大きい。例えばオセアニアでは、この3000年間、初期の移住民とネズミの侵入に始まって、現在までおよそ8000種もの動物がいなくなったとされる。島は外来種に対して、あまりに不用心なのである。しかしながら、どんなにその影響が大きいことが分っても、すでに定住してしまった外来種に、退去をお願いすることは非常に難しい。とりわけネズミは賢く、敵対的な罠や毒はすぐに学習してしまって効果が出ない。仮にうまくいったとしても、服毒したネズミを他の動物が食べてしまうことで思わぬ被害が出ることもある。また、そもそも、ネズミをはじめ外来種たちには、悪意がないのである。その駆除が非倫理的に感じられれば、批判の声が上がることもある。(日本でも最近、奄美大島のノネコ駆除反対に5万人の署名が集まった。)環境保護と、動物愛護はけして同じ立場にはない。守るべき自然の在り方が、同じ人間の間でも、まるで一致していないのである。ただそれでも、少なくとも自分は、本書の原題「RAT ILAND」ことアリューシャン諸島ハワダスク島のネズミ(侵入させたのは1780年に座礁した日本の漁船)を根絶したことは偉業であると思うし、ニュージーランドでわずか一桁まで減ったカカポ(フクロウオウム)が、現在100羽を数えられるまで回復したことは、とても嬉しく思うのである。

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感想投稿日 : 2018年5月2日
読了日 : -
本棚登録日 : 2018年5月2日

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