力なき者たちの力

  • 人文書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409031049

作品紹介・あらすじ

無力な私たちは権力に対してどう声をあげるべきか?
チェコの劇作家、大統領ヴァーツラフ・ハヴェルによる
全体主義をするどく突いた不朽の名著
真実の生をいきるために私たちがなすべきことは何か

すべてはロックミュージシャンの逮捕から始まった――。かれらの問題は自分たちの問題だと共鳴した劇作家は、全体主義の権力のあり様を分析し、「真実の生」、「もう一つの文化」の意義を説く。このエッセイは、冷戦体制下の東欧で地下出版の形で広く読まれただけでなく、今なおその影響力はとどまることを知らない。形骸化した官僚制度、技術文明の危機を訴える本書は、私たち一人ひとりに「今、ここ」で何をすべきか、と問いかける。無関心に消費社会を生きる現代の私たちにも警鐘をならす一冊。解説、資料「憲章77」を付す。

東欧の民主化から30年、人権と自由を考えるために今なお重要なテクスト。「力のない人びと」の可能性とは?
本邦初訳!

感想・レビュー・書評

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  • チェコのベルヴェット革命の中核的な役割を果たし、革命後最初の大統領となったヴァーツラフ・ハヴェルの著書。

    読む前のイメージとしては、たとえばキング牧師やネルソン・マンデラのような非暴力運動の闘志としてのメッセージみたいな本かと思っていたのだが、もともと劇作家ということもあるのか、想定以上に難しい、哲学的な本。

    え〜、こんなに難しい文章を書く人が大統領になったりするんだと驚いた。

    ベースには、アーレントやハイデッガーの哲学がある感じがして、難しいなりにいろいろな刺激があった。

    もうちょっと丁寧に読み返す必要を感じつつ、とりあえずは、書棚のハンナ・アーレントの本のコーナーの隣に置いてみた。

  • 「嘘の生」のくだりには、頷かざるをえないとともに『いま・ここ』ーーつまりこのくに日本ーーにもかれのいう「オートマティズム」が浸透しかけているのを感じ、強い危機感をおぼえる。それはひとびとが、みずからの安全を担保されようとするために自分自身の「理性・良心・責任」を投げ出して権力に従ってしまうことを示す。本著が書かれたのはソ連抑圧下のチェコ・スロヴァキアだが、『いま・ここ』にも十二分に当てはまっているから。
    ただこれに対抗する「真実の生」に関しては、テキストのちからを借りねば一時的な諒解にも及べなかった。わたしにはどうしても、多種多様なひとびとが「真実の生」を求めるならば、各々が対立し、衝突や齟齬を起こすように、またその衝突ほかのために「嘘の生」に糊塗され取り込まれる結果のように思えてならなかった。
    けれど「真実の生」の「責任」「一時的な結束」ということばをテキスト(100分de名著)から読み解いていけば、『いま生きているこのときにそれぞれ、自分の心からの信条にしたがって多様であること』また自分の所属する『構造』に責任を持つことこそが、社会に浸透しているオートマティズム、つまり権力の欺瞞を暴くきっかけになるように感じられたのである。

  •  1989年のチェコスロヴァキア、ヴィロード革命により社会主義共和国から連邦共和国となり大統領となった著者が1978年に書いたものだ。1977年1月1日には、アンダーグラウンドのミュージシャンの政治的な逮捕等をきっかけに、著者やパトチカ等が中心となり「憲章77(Charta77)」を発表している。
     もともと戯曲作家という著者、読みやすい内容となっているが、行間にある意味や背景を押さえておきたい、なかなか興味深い著作だ。
     ハンナ・アーレント、マルティン・ハイデッガー、ヤン・パトチカなどが参考となりそうだ。

  • 人間の尊厳を守る戦いに挑んだ1人の戯曲家の思考の記録。

    全体主義への洞察もさることながら、徹底したヒューマニズムへの信頼と、ヒューマニズムこそが社会を良くするというナイーブとも取れる期待。

    しかし、この書は間違いなく歴史を変えた。
    その事実が、この本の主張する内容の説得度を数段も押し上げる。

    正直読みづらさは否めないし、一読ではわからないところも多い。でも、はっきりとしたメッセージは明確に伝わる名著。

  • もう少し歴史背景を知ってから読むべきだったな。「100de名著」見たかった。

  • 文章が難し過ぎて、理解が出来ませんでした。
    時間が経ったらもう一度読んでみたいと思います。

  • 文章が堅いのと、言葉や言い回しが難しくて、ほとんど理解できませんでした。

  • 人間が社会的生物であることを考えれば、そしてその社会が高度に組織化された社会であれば、その中で生きる人間は必然的にその時代の権力の中で生きていくことになる。
    しかし、もしその権力がその社会に生きる人間の生を阻害するものであったなら、わたしたちはその権力と向き合いつつ、どうやって自らの生き生きとした生を充実させていけばよいのだろう。
    時の権力やシステムに対して、暴力的な革命を起こすのではなく、あくまで自らの生をその社会の中で実現させていく思想がこの書物の中にある。

  • うーん。難しいです。
    こういう内容が「知識人」ではない人たち、
    本当に「力なき」者たちに支持されるのか、
    正直に言うと疑問に感じてしまう。
    ま、私自身の読解力の至らなさを棚上げしてるのですが。

    古典的な独裁とは異なる、ポスト全体主義。
    アイデンティティの対立ではなく、
    アイデンティティ自体の危機。
    積極的に支持しなくても、受け入れること自体が体制を強化する。
    確かにわかるような気はするのだけれど。

    GAFAのビジネスは独禁法に抵触するだろうか?
    最近よく見聞きする話題だが、
    私個人は迷うことなく完全に「No」の立場だった。
    顧客自身の意思でメリットを感じ選択しているのだから。

    ただ、本書を読んでそこにわずかならが「迷い」が生じた。
    もちろんGAFAは、古典的な独裁でもポスト全体主義でもない。
    誰かにサービス利用を強制されることはないのだから。

    ただ、サービスを利用「しない」というだけで、
    アンチGAFAという「こだわり」がある人に見えるだろうし、
    周りからは多少浮いた存在になってしまうのでは?
    自分が主体的にサービスを選択しているのではなく、
    「ゲームの規則を受け入れている」という感覚はゼロではない。

    つまりそれは・・・?
    ん?いったいどういうことなんだ??
    本書を読んで明日からの自分の行動は変わるのか?
    やっぱり理解できていないのかな。難しい・・・

  • 劇作家としての分掌を期待していたら、訳が固すぎてすんなりとは頭に入らない。
     ハベルが実際に話したことをもっとチェコ語が分かる人に日本語に訳してもらった方がいいと思われる。
     大学で講読してそれを訳にしたということではあるが、文章が固い。戯曲作家ということで、中野好夫のような感じで訳してくれたらもっと読者が増えたであろうのに残念である。

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著者プロフィール

 1936年、プラハ有数の富裕な家庭に生まれる。第二次大戦後にチェコスロヴァキアが社会主義体制になると生家は財産を没収され、ブルジョア家庭の出自のため進路にも掣肘が加えられた。
 兵役終了後にプラハのABC劇場に職を得、演劇の道に入る。のち欄干劇場に移り、「不条理演劇」の表現の多様性を追求する戯曲を執筆した。代表的作品に本書収録の二編のほか「ガーデン・パーティ」「ラルゴ・デゾーラート」などがある。
 「プラハの春」挫折後の「正常化」時代には作品の発表を禁じられ、収監も経験したいっぽうで、体制側に異議申し立てをする「ディシデント」として活動。「ビロード革命」で民主化運動を主導した「市民フォーラム」でも中心的な役割を果たし、のちには大統領に就任している。
 晩年、戯曲「サナトリウム」を執筆していたが、脱稿は叶わず、2011年12月に逝去した。

「2022年 『通達/謁見』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ヴァーツラフ・ハヴェルの作品

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