彼らは世界にはなればなれに立っている (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2023年8月24日発売)
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社会派エンターテインメントの雄が贈る衝撃作

「わたしたちの過去も現在も未来も写しとられている。恐るべき傑作だ」(解説より) 翻訳家 鴻巣友季子

「最初のひとりがいなくなったのはお祭りの四日後、七月最初の木曜日のことだった」――
ここは〈始まりの町〉。物語の語り手は四人――初等科に通う十三歳のトゥーレ、なまけ者のマリ、鳥打ち帽の葉巻屋、窟の魔術師。彼らが知る、彼らだけの真実を繋ぎ合わせたとき、消えた人間のゆくえと町が隠し持つ秘密が明らかになる。人のなし得る奇跡とはなにか――。
社会派エンターテインメントで最注目の作家が描く、現代の黙示録!

面白かった。様々な現代の問題が組み込まれた寓話的な作品。架空の街を舞台にしてあるものの、現代に似通う思想や構造である点が良かった。
民主主義から衆愚政治になり、全体主義的な思想が蔓延るようになるのが、今の日本のようで、この作品の終わり方に通じるものがあるのでは、と思いゾッとした。しかるべき時に声を上げないと、この世界の人たちのように自ら人権といったものを放棄し、ディストピアに陥っていますのであろう。
また、羽虫と言われるような差別人種や伯爵といった上級階級の人がいることも今に似通っていて恐ろしかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 図書館or立ち読み
感想投稿日 : 2024年3月1日
読了日 : 2024年3月1日
本棚登録日 : 2024年2月13日

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