佐藤賢一氏なりの見方・切り取り方で語られる世界史である。
その観点は「おわりに」の冒頭に記されている通り。
曰く
「世界史は三世界史から成っている。西世界、東世界、イスラム世界の三世界が、しばしば帝国を形造りながら、それぞれにヘゲモニーを志向し、また究極的には他を容れないユニヴァーサル・ヒストリーを紡いできたため、その三つの流れを合わせたものがワールド・ヒストリーになる。」
との立場だ。
氏の言うユニヴァーサル・ヒストリーとは「ひとつの方向に向けられた歴史」、つまり色んな歴史が並行するのではない単一の歴史とのこと。
もし世界統一を果たした帝国があればその帝国史がユニヴァーサル・ストーリーになるはずだが、いまだかつてそのような国は存在しない。ならば、世界統一を志向した人たちの歴史が、それに準ずるものとして扱うことができるのではないか。
では、世界統一を最初に志向したのは誰で、それがどのように引き継がれていったのか。
以上のような前提のもとに、世界統一を志向した最初の帝国として、アレクサンドロス帝国から筆を起こすのが本書である。
良くも悪くも、なかなか学者では書けない、小説家らしいといえば小説家らしい舞台構想だと思う。
最初は何言ってるんだ?という感じもしたし、読んでいる途中では「東洋史がすっぽり抜け去っている」という点を欠点のようにも感じたが、最終章まで読めば著者なりに中国や日本、東南アジアも、著者の考える枠組みには入ってくると(あるいはなぜ途中まで入ってこないのかという理由が合理的に)説明される。
賛否はありそうだし、なんだかちょっと強引だなとも思える世界史理解だが、こんな切り口もあるのかと面白くもあった。
世界史の語り方なんて無限にあっていいものね。
- 感想投稿日 : 2021年10月17日
- 読了日 : 2021年10月16日
- 本棚登録日 : 2021年10月17日
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