碧空 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2002年8月20日発売)
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本棚登録 : 1229
感想 : 92
5

 凛一シリーズ2作目。
 今回は3人の男の間でもどかしい凛一に切なくなる。
 1978年の頃の話。ちょうど自分の生まれ年に親近感もあるけれど、記憶のかけらもない時代。
 スマホもなければ、もちろんLINEもメールもない。人と人が連絡を取り、つながり合う手段は直接話すか、家の電話もしくは手紙の時代。明確な意志を伴う手段だ。
 そんなやりとりがなんとももどかしく、凛一と氷川の関係を複雑にしているけれど、お互い離れられない存在になっていることを際立たせる。
 氷川だけじゃなく、有沢や千尋とも離れているようで、精神的には寄り添っているため、物理的に距離が近づくとともに急速に身体も心も寄り添ってしまう、凛一の繊細な心の変動が、思春期の危うさを感じた。連絡の取り方や花、虫の描写がところどころ美しい言葉で物語に彩りを添えてくれる、綺麗な景色が思い描ける作品。(野茉莉、斑猫、猩々緋色のグラジオラス、翅黒、、、)
 
 氷川も有沢も千尋もタイプの違う男。3人の間でどこに行くこともできない凛一がどっちつかずでふらふらした印象から、最後、家元にしっかり意思を表そうとしたところに青年期へ向かう成長を感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年11月22日
読了日 : 2023年11月22日
本棚登録日 : 2023年11月4日

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