大それた野心もなく、功名心にはやるでもない下級武士のつましい日常が舞台。無欲清貧ながら何くれとなく平穏とはいかず、難事が降り掛かる。そこをゆるやかに、一芸秀でた才をも発揮して解決に導いていく。こうした時代小説に触れるとほだされる。庄左衛門、たしかに齢を重ねて覇気も衰え、身内の不幸に心が萎えるのも分かるが、ちともどかしい。平素は控えめであれ、百姓の強訴にここ一番の働きをと期待すれば、達者なはずの剣もからきし生かせず仕舞い。最後ようやくうさを晴らしてくれるのだ。志穂との関係は似合わぬが、これも一興ってことで。
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- 感想投稿日 : 2021年5月25日
- 読了日 : 2021年5月25日
- 本棚登録日 : 2021年5月25日
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