連合赤軍の話かあ…リンチとか厳しそうだな〜と思い、しばらく読むのを躊躇っていたのですが、そこはさすがの桐野さん!スイスイ読めちゃうのに的確で鋭い表現で、深いところをえぐってきます‼︎ 一気読みでした。
お話は、西田啓子の現在の暮らしからスタートして、思い出していくものなので、実際の事件の箇所は、全体からすると少ないといえるほどです。むしろ、それが効果的だと思いました。
私自身も連合赤軍事件というものは、イメージでしかなく、あまり理解はしていないのですが。
世間からは単純に「リンチで仲間を殺した」という恐ろしさを持たれ、なおかつ「革命」という名の、あまりにも愚かしい(と私は思う)幼ささえ感じる、そういった犯罪。そして刑期を終えた後の人生とは?
ひっそりと暮らしてはいるものの、啓子自身の頑なさもあり、唯一の肉親である妹や姪との諍いや、しかし、やはり肉親であることの尊さ。妹や姪との喧嘩の場面は、どこまでいっても平行線にしかならない辛さをしみじみ感じました。誰しも、自分の歩んできた道を忘れることは出来ても、消すことは出来ないんですものね。
こんな重いテーマなのに、こんなふうに読みやすく描かれ、しかし答えがあるわけではないのが人生と言わんばかりに、ラストは放り出すように終わる。この桐野さんらしさが私は大好きだ‼︎ やっぱり凄いなあ〜と唸ってしまうのでした。傑作です‼︎
印象的だったところ、少し。
ーーーーー
見栄や思い上がりいや愚かしさ、そして屈辱、若い頃の感情は恥ずかしいことだらけだ。
しかし、自分は何を誤解されたくないのだろう。いったい、「真実」とは何か。
家族は子供が死んでも勿論悲しいけど、その子が誰かを殺したら、もっと悲しいんだと思う。だから、それも親の気持ちなのよ。
彼女は、その場で求められている正答しか言わない。だから、生き延びたんだと思います。
ーーーーー
図書館で借りて読みましたが、文庫版の解説も読んでみたくなりました。
- 感想投稿日 : 2022年8月13日
- 読了日 : 2022年8月13日
- 本棚登録日 : 2022年8月13日
みんなの感想をみる