千利休―無言の前衛 (岩波新書 新赤版 104)

著者 :
  • 岩波書店 (1990年1月22日発売)
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本棚登録 : 602
感想 : 50
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 最近赤瀬川センセイづいちゃってるな。とうとう岩波新書まで。月に3冊ずつ発行される岩波新書、昔は今月はどれにしようかなと必ず1冊ずつは読んでいたものだ。1冊180円の頃か(いつの話だよ)。それが最近はしばらく読んでない。このブログを初めてからほぼ3年にして初めての登場では...、ということはさすがになくてちゃんとここにあった。
 それはともかく赤瀬川原平が岩波新書書いてるとはねぇというのは偏見だろうか、あるいは岩波も柔らかくなったということか。しかも千利休ときた。タイトルからしてまっとうな芸術評論かと思いきや、いやこの著者だからそうは思わないが、自由奔放な論旨展開に、おおそう来なくてはと膝をたたく。それでいて赤瀬川という人を知らずにまじめな千利休論を期待して読んだ人にも納得いくであろう評論に達しているところがなかなかすごい。まったくただものではない。
 なんといっても白眉はIII 利休の沈黙の章だろう。あまりに小市民的な新聞紙の畳み方、蛇口の洗い方、財布の紙幣の並べ方、それらがいちいちうんうんとよく理解できてめちゃおかしい。してそれだけなら読み捨てエッセイにしかならないのが、ちゃんと利休論につながっていくすごさ、いや凄さ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2012年12月31日
読了日 : 2012年12月7日
本棚登録日 : 2012年12月31日

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