魅力的なタイトルの戦争小説だと思って読んだら全然違った。物語の発端は独仏戦争の前線なのだがそこでの若者たちと上官との宿命的な事件と人間関係を引きずって舞台は戦後のパリへ移る。その上官であったプラデルは悪辣な手腕で成り上がり、片や戦争で重傷を負った兵士エドゥアールとアルベールは逼塞した貧しい暮らしを送る。そこからはじまるコン・ゲーム。物語はあれよあれよという間に流れ出し、予測不能のカタストロフへなだれ込む。エドゥアールの父への過剰な葛藤がなければ、そして致命的な負傷を押して家に帰ってさえいれば、何ごともなかったろうにと思ってしまう。しかしエドゥアールの実家ペリクール家に取り入るプラデルとはどこかで衝突する宿命になっていたのだろうし、であればこの結末はそう悪いものではないのかもしれない。が、それにしても父と子の運命の糸が劇的に交わる最終章は悲痛だ。どこかで見たような頑固な役人メルランの厳正な摘発と、身から出た錆で周りの誰彼にも見放されたプラデルの哀れな末路は痛快だが、それをエドゥアールもアルベールもついに知らずじまいなところが残念でならない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
現代小説
- 感想投稿日 : 2016年12月10日
- 読了日 : 2016年11月29日
- 本棚登録日 : 2016年12月10日
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