ヘルメスの杖 (オリンポスの神々と7人の英雄 外伝)

  • ほるぷ出版 (2016年11月25日発売)
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感想 : 5
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パーシー・ジャクソン シーズン2の外伝

『ルークの日記』
ルークは、パーシー・ジャクソン シーズン1で、最初はハーフ訓練所の頼れるお兄さんでパーシーの年上の友達でアナベスの保護者で初恋の人だったのだが、ギリシアの神々の勝手さに神々と人間たちを壊滅させようとするクロノスに加担する。しかし最後に自分の身を犠牲にしてこの世を守ったというまさに”英雄”となった。
作者が「読者からルークの過去を知りたいという質問が来るので、ルークの日記を公開します。これで若くて優秀だった彼がなぜ道を過ったのかわかるでしょう」ということで書いたということ。
たしかにシーズン1でも裏切者悪役のはずなのに、悪役ボスにこき使われ妙にくたびれてて、読んでいて悪役なのに途中から心配になってしまうくらいだったしなあ。まあラストで「いかにクロノスを止められるか」を考えその苦しい方法を自らに課すことにしたということがわかるんですけどね。
時期はシーズン1が始まる前のこと。ルークとタレイアが怪物から逃げながら旅をしていてアナベスと出会う話。タレイアとは疑似家族状態で、タレイアに好かれたり頼られたりして喜んでいて「好きな相手から頼られるとやらずにいられなくなるから、次に相棒を選ぶときは好きになれない相手にしようかな」とか考えてる姿がちょっと可愛らしかった。

『ヘルメスの杖』
シーズン1とシーズン2の間のお話。
心の通じ合ったパーシーとアナベスが交際1ヶ月記念デートをしていると、泡食ったヘルメスが現れて「ぼくの杖が盗まれてしまった!秘密裏に取り返したいんだ!」と言う。
パーシーはある条件と引き換えにその命がけの任務を受ける。
シーズン1と同じくパーシーのひとり語りで、軽妙で一言多くて神妙な場面でおふざけせずにはいられない性格が出てるので、命がけの対決でも軽く読める。
作者が言うには「伝達の神のヘルメスの失態を暴くことになるから、ヘルメスからは郵便配達しないとかインターネット繋げないとか株で損させてやると脅されたけど公表しちゃいます」とのこと(笑)

『ヘルメスのお供であるジョージとマーサへのインタビュー』
ヘルメスが持っている杖には二匹の蛇、ジョージとマーサがいる。誰彼構わず軽口叩く性格で、彼らが出てくるとちょっと息抜きになるという有名脇役。そしてそんな名脇役へのインタビューなのでちょっと気が抜けて軽く読める。

『ブフォードさがし』
シーズン2の1冊目が終わったあたりの物語。現代のアルゴス船を造っている最中のリオがちょっとした失敗をしちゃって、ジェイソンとパイパーに助けを求めるんだけど、なんか人喰いニンフに捕まりそうになって…。
シーズン2でひょいひょいと軽い性質なのはパーシーとリオなんだが、そのリオが中心なのでかなり深刻な状況でも軽く語られる。

『魔術の女神の息子』
これは作者のリック・リオーダンの息子で16歳のヘイリー・リオーダンが書いた短編だ。
ヘイリーがADHDで難読症と診断された時、リック・リオーダンは彼が大好きなギリシア神話を文字を覚えるために聞かせていたところ「続きのお話を作って」と言われたので「パーシー・ジャクソンシリーズ」を書いたのだそうだ。作中でパーシーを始めとする神と人間とのハーフは、リックと同じADHDで難読症としている。
そしてそんなヘイリーがこの短編を書いたというのだからすごいよなーーーと素直に思う。
シーズン1のあと、敵のクロノス側について生き残ったハーフはどうなったのか?なぜ怪物はハーフを狙うのか、などの謎の解説となっている。
16歳のデビュー作で文章はさすがに堅いし物語も重圧感のあるシリアスだけど、ちゃんと理由付けもできているし、お話としても面白いし、語り口や話の展開方法は親子で似ていると思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: パーシー・ジャクソン
感想投稿日 : 2021年2月9日
読了日 : 2021年2月9日
本棚登録日 : 2021年2月9日

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