歌人枡野浩一の全短歌集。
「簡単な現代語だけで読者が感嘆してしまうような表現を目指す『かんたん短歌』を提唱」ということです。
読書知人にお勧めいただきました。ありがとうございます。
私は詩や短歌、俳句、ツイッターなど短い言葉での表現の受け取りが苦手なんですよ。作者(詠み人)と感性が違うとわからない、言葉が少ないのに回りくどくて何言っているのかわからない、反対にズバリ過ぎて「何だったんだあれは」で通り過ぎてしまう感じがするからかと思っています。SNSになると如何に相手を傷つけて「うまいこと言った!」になっているのは、本心の言葉なのかうまいこと言う競争しているのか(-_-;)
こちらの枡野浩一の短歌は、負の感情や性的なこと、世の中のことをかなり赤裸々に詠っていますが嫌な感じがしないのは、短歌という形で自分の感情をアウトプットしていて、他人や社会に対する攻撃や恨みは感じないからかなと思いました。
私の友達で趣味で漫画書いている人がいるのですが、友人たちで集まって大変だったことや嫌なことをワイワイ愚痴大会みたいに話していると「そのネタもらった!」って言ってたんですよ。それを聞いて「そっかー、嫌なこともネタゲットと思えば良いのか」と考えたんです。
枡野浩一の短歌も、言葉にして出せすことで溜め込まずに良い方向に向かえる、嫌なことがあったらこの感情をどうやって昇華しよう?と考えられたらその感情ももったうえで、言葉に気持ちを込めことができる人間と言葉の関係を感じました。
『口笛を吹けない人が増えたのは吹く必要がないからだろう』
『真夜中の電話に出ると「もうぼくをさがさないで」とウォーリーの声』⇒なんというか…ごめんなさい。
『ついていないわけじゃなくってラッキーなことが特別起こらないだけ』
生きるって…
『階段をおりる自分をうしろから突き飛ばしたくなり立ち止まる』
『とりあえずひきとめている僕だって飛びたいような気分の夜だ』
他人への怒りや悲しみを言葉に変えるとよいパワーになりそう。
『殺したいやつがいるのでしばらくは目標のある人生である』
『加害者であると解釈されたならどんどんなつてゆきさうな俺』
『被害者であると解釈したければどんどんなつてゆけさうな僕』
『あの野郎の追悼文は俺が書く ほかのだれにも書かせはしない』
『あの人は元気でしたか? いや別に何もおしえてくれなくていい』⇒なんか好きだ、そんなことある。
『時効まであと十五年 もしここで指の力をゆるめなければ』
『他人への怒りは全部かなしみに変えて自分で癒やしてみせる』
やはり歌人なので言葉についての言葉もあります。
『「ライターになる方法を教えて」と訊くような子はなれないでしょう』
『増野ではなく升野でも舛野でもない枡野なんです』⇒はい!覚えました 笑
『切り売りというよりむしろ人生のまるごと売りをしているつもり』
『川柳と俳句と短歌の区別などつかない人がモテる人です』⇒はい、私です、ただ感性が鈍いだけです。(鈍い人のほうが世間受けするってことだろうか)
そしてやっぱり言葉とは人間にとって善いものだと私は思いたい。(私自身嫌な言葉の使い方をしてしまうので、反省を込めて)
『結婚はめでたいことだ臨終はかなしいことだまちがえるなよ』
『気をつけていってらっしゃい 行きよりも明るい帰路になりますように』
- 感想投稿日 : 2023年4月15日
- 読了日 : 2023年4月15日
- 本棚登録日 : 2023年4月15日
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