夜果つるところ

著者 :
  • 集英社 (2023年6月26日発売)
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本棚登録 : 1988
感想 : 150
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『鈍色幻視行』を読んだ後、気になって仕方なかった本。
幻の作家「飯合梓」によって執筆された幻想譚といったらいいのだろうか。
リバーシブルカバー仕様になっているところにも細やかさを感じる。


昭和初期の遊廓だろうか、山のなかにある「墜月荘」にいる私には三人の母がいる。
鳥籠を眺めて、ときおり奇声を発するのが産みの母・和江であり、身の回りのことを教えてくれる育ての親は、莢子。
無表情で帳場に立つのは文子。

私が鳥籠のなかにいるように三人の母をじっと眺めている。そんな奇妙な感覚のなか始まる夜と、夜が終わるところで生きていた。
私が見たもの。
私が書いたもの。
それは、まるで空想の出来事のようであったがすべてが終わったとき、現実だと感じる。

荒唐無稽な話のようであると思わせるのが、またこの昭和初期という時代だからだろうか。
私自身が何者であるのか、性も偽ることで「墜月荘」でいられた理由や私がしたことは本当なのか…。

あの「墜月荘」を忘れることがない私は、ずっと「ビイちゃん」のままでいたかったのかもしれない。

妖しく昏い話だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年9月25日
読了日 : 2023年9月25日
本棚登録日 : 2023年9月25日

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