とんび (角川文庫 し 29-7)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年10月25日発売)
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感想 : 1024
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重松清の作品を読むのは初めてである。
図書館で見つけたけど、白い雲の浮かぶ青空にとんびが1羽飛んでいるカバーデザインが、なんかいいなーと思って借りてみた。

いやー、涙腺崩壊ものでした!
しばらく読むうち、涙が出てきてしょうがない。
結構、全編にわたって泣いてたような気がする。
(歳取ると涙もろくなる…)

主人公のヤスさん
奥さんの美佐子さん
息子のアキラ
ヤスさんの幼馴染の照雲和尚
飲み屋「夕なぎ」のたえ子さん
これら登場人物たちを描いた感動巨編?である。
この本には悪人は登場しない。
みんなが家族や仲間たちを愛し、思いやっている。
その純粋さに、あらためて胸を打たれてしまうのだ。

また、ここで描かれているのは、私自身が過ごしてきた時代そのものでもある。
ほぼ、息子のアキラと同世代。
当時、けっして裕福ではなかったが、なぜか明るい未来を夢見てた昭和中期から後期の高度成長期が舞台で、つい自分自身の人生とダブらせてしまう。

テレビでの野球中継が盛んだった
サリドマイド事件
吉展ちゃん誘拐事件
おもちゃのちゃちゃちゃ
てなもんや三度笠
舟木一夫の高校三年生
坂本九
ピーナッツ
三田明
梓みちよの「こんにちは赤ちゃん」
スバル360
仁義なき戦い
銭湯
五木寛之の青春の門
昭和天皇の崩御

登場するこれらのワードは、あの頃自分自身がどうしてたのかを思い出させ、懐かしさに鼻の奥がツンとして、目頭かが熱くなってしまった。

とくに、私の家庭も、主人公と同じように裕福ではなく、銭湯通いだったし、父親がはじめて買った車はスバル360で、タバコはハイライトを吸っていて、いつも日本酒は二級酒を飲んでいた。
私も高校の頃、五木寛之の「青春の門」を読んで、早稲田に行きたかったな。実際は実力不足で早稲田は受験もせず他の大学に行ったが…。

私の場合は、時代背景がぴたりと一致していたため、物語自体だけでなく、自身の過去をオーバーラップさせたことで、より感動が倍加した部分も大きいと思うのだが、当時を知らない若い人は本作を読んで、果たして、どう感じたのか知りたいところではある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年2月18日
読了日 : 2024年2月17日
本棚登録日 : 2024年2月17日

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