科学哲学者である著者が、クーンの考え方や生涯を「“科学”殺人事件」に見立てて紹介しながら、彼の登場による科学哲学の展開や今後について焦点をあて評じた本である。
ここでいう「”科学”殺人事件」とは、クーンの「パラダイム概念」が科学の合理的進歩を否定し、科学的知見や成果が相対的なものにすぎないとして科学の権威を失墜させた、という見解を指している。
しかし著者によると、パラダイム概念は科学的知識における進歩史観を否定したものではあるが、本来的(=クーンの意図したところ)には、パラダイム間は相互に理解不可能なものではなく、片方が立てばもう片方が立たないものではないという。そして何故クーンが科学を貶めたという誹りを受けることになったのか、文献や記録を確認しながら、科学哲学の展開に沿って検証していく。
科学や科学哲学の歴史を丁寧に辿り、また近年の科学哲学の潮流についても触れられている。相反する主張についても対立軸がわかりやすく書かれており、良書。
個人的には、クーンがパラダイムの概念に至る過程に社会科学者との交流が強調されていたことが面白い。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
人文科学
- 感想投稿日 : 2018年7月31日
- 読了日 : 2016年3月1日
- 本棚登録日 : 2018年7月31日
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