注文の多い注文書 (単行本)

  • 筑摩書房 (2014年1月23日発売)
3.88
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本棚登録 : 2020
感想 : 238
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小川洋子とクラフト・エヴィング商會の共著。小川洋子さんの文学少女っぷりを感じさせる作品。

小川洋子が5冊の小説から想起された“もの”の『注文書』を作成し、クラフト・エヴィング商會が『納品書』とともに納品するという構成の作品。
クラフト・エヴィング商會による『納品書』と『納品物(の写真)』も見事なのだが、やはり小川洋子の『注文書』が素晴らしい。底本となった5本の小説への愛が溢れています。

人体欠視症は川端康成の『たんぽぽ』に出てくる魅惑の病。病である以上、魅惑も糞もないのだが、小川洋子さんもこの病で創作がしたくなったのでしょう。『たんぽぽ』が1話目の底本だ。
2話目の底本はサリンジャーの『バナナフィッシュにうってつけの日』、3話目は村上春樹の『貧乏な叔母さんの話』。
何となく似た系統の2作品ですね。「登場する料理を再現し試食する」「作家の好きなフレーズベスト10を作成する」「各作品のブックデザインを比較する」。『うん、わかるよ。わかる!』と言いたくなる様な活動をする読書クラブが2話目に登場します。
4話目はボリス・ヴィアンの『うたかたの日々』、またまた幻想的な病の登場。
そして最終話は内田百聞の『冥土』。

こういう本を読んで育った少女がああいった素敵な小説を書く作家さんになったんだなと勝手に妄想しちゃいました。

底本は読んで無くても楽しめますが、読んでいるに越したことはありません(ネタ元となった本という意味で“底本”と使ってます)。

“あるはずのないもの”を発注するという発想自体が小川洋子さんの『薬指の標本』っぽいなぁと思ってたら、途中で標本士の弟子丸さんが登場しました。『薬指の標本』が最大の底本かも知れません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月2日
読了日 : 2023年7月2日
本棚登録日 : 2023年7月2日

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