久々に読んだら小嶋陽太郎のイメージをガラっと覆す小説でびっくり。もっと軽妙で前を向いたポップな小説を書く人のイメージだったのだが、この本は軽妙さやポップさは(ないとは言わないが)影を潜めている。
主人公と親友とそこに現れた一人の女の子。そういう三角な関係が2つ。大学生の市川君と中学生の佐野君の視点で交互に章立てされて話が進む。どちらもまっすぐな友情物ではなく、かなりの登場人物それぞれの背景からして曲者で、一角を成す女の子との関係もそうとうに曲者。
話が進むにつれて張られた伏線になんとなく気付いてくる。その伏線は決して目新しいものではないのだが、それでも回収されるときの衝撃は鈍くドンっと響く。ミステリーじゃないので「あっ」と驚く必要はない。そうかこういう回収による表現もあるんやと、衝撃におののきつつ感心する。
読後にタイトルの意味と、第一章が唐突に始まる意味が分かって、それでまた感動する。小島陽太郎、やっぱただものじゃない
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本小説
- 感想投稿日 : 2023年8月5日
- 読了日 : 2023年8月4日
- 本棚登録日 : 2023年7月29日
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