誉れの赤 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2016年6月15日発売)
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感想 : 6
5

久々の吉川永青作品。井伊の赤備えといえば、その甲冑が彦根城にも展示されていて、ひこにゃんも着ていて、地元のこんにゃくは赤色というくらいに、近江では有名なものなのだが…これ、元は甲斐の武田に所属していた武士団(備え)の甲冑色。

三方ケ原の合戦で家康を震撼せしめた武田軍団。その中でも最強をもって知られる赤備えは、長篠の合戦で織田・徳川連合軍に敗れた後、徳川に呑まれ、家康直轄の所属ながら井伊長政の指揮下におかれることとなる。

武田から徳川に移った赤備え、その軍団の中にいた男2人の物語。日本史の動くさま、合戦描写の見事さ、武田勝頼・徳川家康・豊臣秀吉・大政所・井伊長政など歴史上の著名人の描写の巧みさ、とにかく読み処満載。上手いし熱量もある、少々詰め込みすぎという部分も感じられるが、作者にとっては初期の作品、気負いも味わいの時期だろう。

何より主人公2人、勘五郎と藤太の人生の岐路とその後の歩みの描き方が見事。「赤備え」を大切にする二人だからこそ、それぞれの価値観で袂をわかつあたり、現代人の生き方にも十分にあることで、共感があふれる。

ラストの、関ヶ原合戦シーンは少々ベタながらもこれ以外はないだろうなという名シーン。NHK大河か劇場映画でやれば、大うけすると思うんだが?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本小説
感想投稿日 : 2021年1月17日
読了日 : 2021年1月17日
本棚登録日 : 2021年1月8日

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