同じ神をルーツにもつユダヤ教、キリスト教、イスラム教。その中で、公然とレイシズムを推し進めてきたのはキリスト教だけだ、と筆者は指摘する。その証左を宗教画に求める、というのが本書の趣旨。
ただ、その様相はそんなに単純でもないらしく、黒い肌の人物へのリスペクトが感じられる作品も挙げられている。また、アフリカ大陸の人々への蔑視は確かに古くからあるものの、今日のような根深さや執拗さを増していくのは大航海時代であるらしい。しかも蔑視の眼差しはアフリカだけに向けられたものでもなく、さらに、オリエンタリズムやロマン主義とも相俟って、一言で纏めるのは難しい。
ただ言えるのは、美術作品にはその当時の「当たり前」が抜き難く刻印されており、現代に生きる我々はその色眼鏡のままに作品を受け取らないよう気をつけなければならない、ということ。気づかないうちに白人至上主義的な視点に巻き込まれて、『黒い皮膚 白い仮面』で言うところの「乳白化」を無意識のうちに志向してしまわないように。「美白」「ブルベ」などという言葉に取り憑かれがちな女性は特に。自戒を込めて。
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- 感想投稿日 : 2021年2月12日
- 読了日 : 2021年2月12日
- 本棚登録日 : 2021年1月24日
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