サンソン回想録:フランス革命を生きた死刑執行人の物語

  • 国書刊行会 (2020年10月18日発売)
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パリの死刑執行人の家系サンソン家4代目当主の、人生と苦悩。
サンソン家に直接取材し、多くの資料を基に書いたのは、
若き日のバルザック。本邦初訳。
・はじめに・・・翻訳にあたった経緯が書かれている。
      1830年に共著二巻本で出版。バルザックと共著者の
      書いた部分を振り分けた本を基に翻訳、等。
全14章。
・シャルル―アンリ・サンソン関係略年表
・サンソン家関連文献・資料案内
サンソン家歴代当主の残した手記や日記等の多数の資料と、
5代目当主から聞き取った記録から、サンソン家4代目
シャルル―アンリに成り代わって語る、死刑執行人の姿。
敬虔な彼を偏見と誤った情報が苦しめる。
少年時代、寄宿学校を放校になった差別といじめ。
家業を知った時の衝撃。逃れられない継承。
政情不安と庶民の不満が高まっていく革命前の様子。
その合間に現れる幾つかの逸話は、フィクション化し、
人の心の情景に重きを置いた味わいを感じられます。
各地の死刑執行人の歴史と彼らの扱い。
彼らの職務である、拷問と興奮状態の民衆の前での刑の執行。
牢獄管理人の存在。恋と家業に挟まれた苦悩。
死刑執行人だけでなく、らい病、教会での様々な差別等。
銃殺刑の悲劇、軍隊における殺人。
バルザック自身の、死刑制度廃止の思想も盛り込まれています。
だけど、イタリアでの死刑執行人と盗賊の逸話の
クライマックスで終了。続編は出ることがありませんでした。
シャルル―アンリの初仕事もフランス革命も無し!
前年『ふくろう党』が評判になり、人気作家への道を歩み始め、
次年には新聞王ジラルダンと組むようになり、多忙の中に
続編には手を付けられなかったのかもしれない。
なんとも残念です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学(外国)
感想投稿日 : 2021年2月3日
読了日 : 2021年2月3日
本棚登録日 : 2021年1月21日

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