これぞ読書の醍醐味。
もう充実過ぎるほどの至福の時間をいただきました。
始めこの分厚さに慄き、えっと、これ読めるのかな?と心配でしたけれども、読み始めましたらば気難しそうな印象は気持ち良く払拭。
とある日の春のモスクワの公園、悪魔の一味の降臨にてその事件が勃発。
作家協会議長ベルリオーズとペンネーム<宿なし>の詩人・イワンがキリストの実在性について論じていると第三の男が登場し、不吉な予言を言い放つ。「ベルリオーズの首が切断される」と。その予言通りちょん切られ転がるベルリオーズの頭。
衝撃的な展開に目が離せなくなりまして、そのグロでファンタスティックな世界にすっかり魅了されてしまいました。
その後のめくるめく展開…ローマ総督ポンティウス・ピラトゥスの物語、黒魔術、しゃべる黒猫(シュールで可愛い)、魔女、大舞踏会、悪魔の圧倒的な存在感。
これらの放つ魔力が強烈。
とにかく様々なジャンル盛り沢山で次々に現れる登場人物たち、彼らに降りかかる奇想天外な事件たち、次は一体何が起きるのか、物語の着地がどうなってしまうのか続きが読みたくてもう止まりません。
こんなにも面白い奇想小説ですが、実際にはソビエト時代では長きにわたって刊行禁止だったそうです。禁書によって文壇から葬られてしまった巨匠、それはブルガーコフ本人であったのかもしれません。
自分の書いた作品が公にされることなく葬られることの無念さ、作品が活字になることへの切なる願いが、巨匠の物語が灰の中から奇跡的に蘇るというところに切々と感じてしまって切なくなってしまいました。
好きな書物を何ら制限なく読める奇跡とも呼べる幸せ、こんなにも恵まれていることに感謝せねば、と強く思ったのでした。
好きな書物を何ら制限なく読める奇跡、幸せ、こんなにも恵まれていることに感謝。
- 感想投稿日 : 2013年5月8日
- 読了日 : 2010年1月11日
- 本棚登録日 : 2013年5月8日
みんなの感想をみる