海辺の光景 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.50
  • (14)
  • (38)
  • (55)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 556
感想 : 38
2

精神を病み、海辺の病院に一年前から入院している母を、信太郎は父と見舞う。医者や看護人の対応にとまどいながら、息詰まる病室で九日間を過ごす。
戦後の窮乏生活における思い出と母の死を、虚無的な心象風景に重ね合わせ、戦後最高の文学的達成といわれる表題作ほか全七編の小説集。

はじめ読んだ時は、現代と当時の家族関係の差が大きすぎて理解できずに終わりました。
解説を読んで分かったのは、この「海辺の光景」は父親の権威の失墜、母親の消失を経て、
息子である主人公が成熟する物語なのだということです。

戦時中の母子の非常に内密な関係が、父親の帰還によって崩されていく。
それと同時に、陸軍少将でありながら敗戦により無職になったために起こった、父親の権威の失墜。
二つの要因により、主人公は家族から解放されて成長するのだということです。

戦後の背景を鑑みても、母親を汚らしい生物として見る主人公に共感できなかったので、★2です。


読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年2月23日
読了日 : 2021年2月23日
本棚登録日 : 2021年2月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする