悼む人 上 (文春文庫 て 7-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2011年5月10日発売)
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“悼む” ----- 人の死を悲しみ嘆く -----

といっても、静人は各人の死亡現場で祈りを捧げ、「あなたのことを憶えておきます」と唱えるだけで、事件・事故のネタは新聞記事やラジオから拾ったもの。
しかも祈りに際して死にいたる顛末には触れないと決めているため、唱える内容はどれも酷似したものになってしまいます。

被害者の遺族や友人から罵倒されることも多いにも関わらず、薄っぺらい祈りを重ねて何になるのか。

何より、他人の死を悼むあまり、何より大切な家族の死を身近で悼むことができなかったのは本末転倒ではないでしょうか。
友人の命日を忘れるよりも罪深いように思えるのですが…

「静人の悼む行為は理解され難い」と作中でも槇野に指摘されていますが、全くその通りで、
最終的な行き着く先が見えず、困惑が残る結末でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年1月26日
読了日 : 2022年1月26日
本棚登録日 : 2022年1月26日

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