面白かった。一話めは、完全に一人称での語り口が晩年の筒井康隆の作品のどれかとの相似を思った。是非はなく、ただそう感じたというだけだが。全話ともこれまで読んだどの作品とも共通して、舞台は江戸時代中期、武士がもはや武威のみにては生きられなくなってきた時勢に対し、それでもなおかつ武士であらんと煩悶する姿を取り上げている。エピソードは違ってもテーマは同じ。さらに、武士を武士たらしめているのは、一事あれば真っ直ぐ死を潔くすることを自ずと腹に呑んでいるかどうかだとする点も他の作品に共通する青山作品に置ける武士の定義。あえて辛い意見を言えば、そろそろ同じ舞台装置と類型の人物群像にやや食傷してきた感も抱いてしまった。相変わらずのディテールの精密さ、そこからの本当にリアルな空気感はさすが安心して楽しめるものではあるものの。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2018年1月18日
- 読了日 : 2018年1月18日
- 本棚登録日 : 2018年1月18日
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