人はどこまで合理的か 上

  • 草思社 (2022年7月12日発売)
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邦題「人はどこまで合理的か」にストレートに惹かれて購読。フェイクニュースやポスト真実、陰謀論の蔓延など、大国のリーダーから地域の隣人まで、合理的判断ができない事例が増えている気がして、いろいろ学びたいと考えた次第。

簡単な数学の問題や確率、予測など、ちょと冷静に考えたり議論することで、正しい答えが出せるような問題でも、短絡的、性急に答えを出して間違ってしまう。これは「無知」とは異なるもので、高学歴な方や論理的な方でも陥る罠であるとのこと。

また、認知バイアスの問題も無視できない。人種、性別、出生地、職業などに対する先入観や水面下の差別意識から、判断を誤るケース。数年前にファクトフルネスがベストセラーになったが、これはこのことの裏返しなのだろう。

このほか、「限界効用逓減(今すぐ1000ドルもらうことと半年後に2000ドル貰う選択だと、1000ドルを選択する人が多い)」「共有地の悲劇(みんなで管理すれば全員の利益になるものを、個人の利益を優先して共有地が滅びる事例)」「囚人のジレンマ」「相関と因果の混同」など、多くの要因があることがわかり参考になった。

中でも重要なのは、「マイサイド・バイアス」。これは「いろいろあるけど自分が一番賢い、自分が一番正しい判断ができている」と思いたいことからの偏見。これが悪化すると、〇〇ファーストなどという活動が過激化するので、覚えておきたい。

多くの残念な事例が目立つものの、人類は確実に進歩している。パンデミックを抑え込み、森林破壊を抑えようとし、貧困率は減少している。これは、人間が合理的である証拠であり、希望はあるのだと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年11月8日
読了日 : 2022年11月8日
本棚登録日 : 2022年8月30日

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