噛みあわない会話と、ある過去について (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2021年10月15日発売)
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感想 : 867
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人の何気ない言葉で傷ついてしまい、又、自分も人を傷つけてしまっているかもしれない。無意識の悪意、という罪深さ。その罪は、ふつうの身近な私たちに起こる。
こういう怖さが言語化されているのを初めて読んだ気がする。
原因が明確で人と対立しているとは違うのだ。
相手の言動が読めないわからない、そもそも会話が噛み合っていない。そこに立ち上がるのは「幽霊」。解説を読み腑に落ちた気がする。
多分自分のところにも居るだろうと思う、そのユーレイ。生き続けている刺さってしまった過去。
一つの出来事においても、気持ちの捉え方、記憶のズレはあり、ある人は良い思い出と言っても、片方は嫌な思い出だったりする。だから噛み合わなくて然りなのだ。
刺さった言葉が自分にとって急所を突かれたものなら、それを糧として踏ん張っていくしかない。理屈ではわかるのだが、トゲってなかなか抜けない。
教え子の本音を知る「ぱっとしない子」。この生徒に共感してしまった自分がいる。先生というのはカースト上位の子の印象が強いのだと思う、仕方ない。
一度で理解出来なかった「ママ・はは」。
そういう手があるのか。ぞくっとして面白かった。

最初は、自分が受けた傷みたいなのを思い出し抉られる思いがしたけれど。もしかして自分がした何かで、相手の心に何か残していたら、と、ビビリの自分はそこが怖かった。結果的に、責められる側視点で描かれているような。だからか、ざわざわしてしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年2月11日
読了日 : 2024年2月11日
本棚登録日 : 2024年2月11日

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