韓国の小説ということで少し気構えていましたが、何の抵抗もなくとても読みやすかったです。
終盤の思わぬ展開に息をのみましたが、ラストは希望が見えて良かった。
感情の理解が難しい主人公ユンジェ。アーモンドとは、脳の一部分「偏桃体」、ユンジェは人より小さいために感情というものがほとんどない。
幸せなユンジェの誕生日、そしてクリスマスの日が一変する。最愛の母と祖母が目の前で通り魔に襲われる惨劇にあう。この先ユンジェはどうやって一人で生きてゆくのか、読んでいても心細かったです。
その後、真っすぐで、感情の起伏の激しいゴニ(幼い頃親とはぐれ、複雑な環境で生きてきた)と出会う。最初は分からなかったけれど、「友情」という感情が育まれていきます。ゴニが体当たりでユンジェに向かってゆく様子にほろりときました。
「彼は、僕の友だちだから」最後そういうセリフがユンジェから出る。泣けてきそうだった。
感情なんかなければ、嫌な思い、辛い思いもしなくてすむ。人と出会わなければ、苦痛も喪失も感じずにすむ。何もなければ。だけど世の中で一人きりで生きてゆけるわけではないし、感情があるから嬉しさも幸せも感じることができる。友情も恋愛も親子すべての愛も。こういうメッセージを強く感じました。
母親は、ユンジェが小さい頃、異変を感じ病院へ連れて行く。現実を知り(失感情症)、悲観にくれたが、辛抱強く壮絶な訓練をする。それが我が子が不幸にならない方法と信じ。
最後の「作者の言葉」にあるように、自分も子供を産んだ時を思い出した。
小さくて頼りなくて、私の手一つで育てる。可愛いだけではすまない。不安と責任を感じていた。
最後にこうあります。「人間を人間にするのも、怪物にするのも愛だと思うようになった」
とても良い本に出会えました。
- 感想投稿日 : 2021年2月7日
- 読了日 : 2021年2月7日
- 本棚登録日 : 2021年2月7日
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