劇場版 NEON GENESIS EVANGELION - DEATH (TRUE) 2 : Air / まごころを君に [DVD]

監督 : 庵野秀明 
出演 : 緒方恵美  三石琴乃  山口由里子  林原めぐみ  宮村優子 
  • キングレコード
3.83
  • (204)
  • (147)
  • (239)
  • (17)
  • (12)
本棚登録 : 1028
感想 : 138

旧劇場版をいまさらながらにして見る。一応、テレビシリーズも一気に観た。漫画であらすじは知っていたものの、細かくは知らなかったが、個人的には押井と庵野は一緒に括れる監督かもしれないと感じる。彼らは確かに哲学観を売りにしているのかもしれないが、彼らの哲学観は表層をなぞっているに過ぎず、非常に浅い。この浅さで揺さぶられるのは、たぶん大学生あたり(あるいは高校生)までだろう。別に作品自体を卑下しているわけではなくて、作品自体は素晴らしいと思うのだけれども、やはり深く深く掘り下げてしまっては、ストーリーの方向性がずれてくるというところもあるのだろうし、そもそもこの両監督共に彼らが意図的にはそれほど哲学的に深い場所にいるわけではなくて、むしろ、彼らが表現するものが彼らの才能もあってか、深みを内包しうる可能性をもった世界観を成立させうるということだろうか?作品自体が深みへともぐる可能性を内包していることは間違いないし、ただ作品の上でなぞれるのはあくまで浅い部分までということである。とはいえ、押井のわざとらしさに比べれば、庵野の方が巧妙だと感じる。ただし、エヴァで言わせてもらうならば、やはりストーリー自体が完全に破綻している。恐らくは辻褄あわせみたいな部分を欠いて、ストーリーを描いてしまったのではないだろうかと感じる程度には破綻しているし、その破綻した部分がかえって、この作品の世界観をより広いものであるように錯覚させてしまったのではないかとすら感じられる。

ともかく、最終的にシンジとアスカの二人が生き残ったわけなので、二人がアダムとエヴァとなるということなのだろうかね?なんとなくあの二人なら別に二人しかいなくとも生きていけそうではあるけれどさ、いまいちヒロイン像も定まりにくい。レイ、アスカ、ミサトの三人がヒロインなのだろうけれど、アスカ以外は、母親としての役割も持っているので、やはりヒロインというとアスカとなるのかもしれない。その証拠に、シンジにとっては性的対象=アスカだったわけで、レイでもミサトでもなかったというのが、シンジの意識のベクトルみたいなのを表象しているような気がする。ミサト=家族(姉、母、恋人)、レイ=もはや定型では括れないカテゴリー(強いて言えば、懐かしい存在)、アスカ=異性といった具合だろう。ともかく終盤の悲劇的な展開は明らかに庵野の心的状態を表象しているのかもしれない。もはや、めちゃくちゃである。ただ、こういう世界観は分裂症的世界観を経験した人間なら誰しもが持ちうるものであり、それをこういった形で大々的に表現できた彼は幸せなのだろうとは思う。幅広い共感も得られたわけであるし。言ってしまえば人類保管計画=庵野の精神的混乱の統一作業とでも言えるわけで、しかし、彼は最終的にはそれを統一せずに混濁したまま生きることを選んだとも言える。とりあえず、文句としてはカヲル君が色々な意味であまりにも性急すぎること、映像を省くためのテロップの乱用、総集編のやる気のなさ、聞きかじったレベルの哲学やら臨床心理用語の頻発だろうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内映画(アニメ)
感想投稿日 : 2011年12月3日
読了日 : 2011年12月3日
本棚登録日 : 2011年12月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする