京極夏彦先生の著書はあの分厚さに圧倒されてしまうので、ほとんど読んだことがなく、物心ついてからしっかりと京極先生の本を読んだのは本書が初めてかもしれない。
本書が京極堂シリーズでの一部であるということは知っている。それなのに京極ワールド初心者の僕がスピンオフ的な本書から京極先生の本を読み始めるなどと言ったら、それこそ京極先生の熱狂的なファンに斬り殺されても文句は言えないのだが、とりあえずそこら辺は曖昧にしつつレビューを書いてみたいと思う(笑)。
まず、京極先生の文章が独特だ。
終戦から間もない時代が本書の背景なのだが、言葉使いが読みにくくはない程度に古風な言葉使いがされている。このあたりの微妙な文章加減が絶妙。慣れるまではちょっと読みすすめるのに時間がかかる。しかし、慣れてしまえばサクサクと小気味よく読むことができる。
本書は題名にある『鬼』の因縁を持った人物が、鬼の怨念、祟りの宿った刀を所持したことによって次々と事件を起こしてしまうというお話。
「昭和の辻斬り」という日本刀を使った通り魔事件が連続して発生し、最後に殺された女学生の恋人と名乗る男性が逮捕されるが、そこには違和感が漂う。本当にこの男性が犯人なのだろうか・・・。
本作はミステリーというか謎解きというか、ほとんどが本書の主人公で探偵役でもある記者の中善寺敦子と女学生呉美由紀の会話のシーンによってすすめられるという独特の描写、なるほど、これが京極ワールドか。
やはり、話の節々に中善寺敦子の兄・中善寺秋彦の存在がでてくるので、やはりシリーズ第一作で京極先生の処女作『姑獲鳥の夏』は避けて通れないのだろう。こちらはいずれ読んでみたい。
そして、この本の最大の見せ場は、犯人がだれかという推理や新撰組の鬼の副長・土方歳三を絡ませた刀の由来もさることながら、やはりラストシーンだ。
事件の全容を聞いた後、呉美由紀が激おこプンプン丸で大人達に正論をぶちかますところは読者の心をすかっとさせてくれる。
非常に興味深く読めた。
本書は今昔百鬼拾遺シリーズ3部作なので、次の『河童』、『天狗』と読みすすめていきたい。
- 感想投稿日 : 2019年9月11日
- 読了日 : 2019年9月5日
- 本棚登録日 : 2019年9月11日
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