木皿泉の短編集。初読みの作家さん。
非常に不思議な雰囲気を持っている小説だった。ライトSFファンタジーという括りになるのだろうか。
本書の背景としては、人間や動物にそっくりなアンドロイド(AIロボット)が人知れず世の中に忍び込んでおり、人間の生活を監視しているというお話だ。
一つ一つな話がハートフルで、心がふんわりと温かくなる感じである。
AIロボットが監視しているなどというとジョージ・オーウェルの名著『1984』のようなディストピア社会をイメージしてしまうが、この小説で描かれる世界はもっとごく普通の「AIロボットなどあくまでも都市伝説だろ」と一笑されてしまうような現代世界に近い社会である。
そんな普通の暮らしのなかで、
いじめを助けてくれた同級生が実はアンドロイドではなかったのか?
今、目の前を横切った猫は実はAIロボットだったのではないのか?
と、後になって考えてみれば「もしかしたら」と考えてしまうようなごくごく弱い違和感というか、不思議な感覚が得られるのである。
『SFハートフル短編集』などというジャンルまだないのかもしれないけれど、気がつかない間にちょっとした時間旅行をしてしまったかのような、少し得した気分になれる小説だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説(エンターテイメント)
- 感想投稿日 : 2019年11月25日
- 読了日 : 2019年11月18日
- 本棚登録日 : 2019年11月25日
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コメント 1件
やまさんのコメント
2019/12/10