この世の中に「何の変哲もない人生」などというものはない。
この物語はミズーリ大学助教授として人生を全うしたウイリアム・ストーナーの人生を彼の誕生から臨終までを記した小説である。
田舎の百姓の一人息子として生まれ、両親の苦労のおかげで大学へいくことを許された。
大学で農業を学ぶはずであったストーナーであったが、英文学の面白さに魅せられ、大学を卒業後も大学院に残り、英文学を研究することを選んだ。
若き文学研究者として生きるストーナー。
同じ研究者である友人たちとの交流。
のちに彼の妻となる美しい娘との恋。
第一次世界大戦で友人の一人を失う悲劇。
結婚後、精神を病んでいく妻との確執と娘の誕生。
ライバル教員との対立。
娘の教育を巡っての妻とのいさかい。
新しい恋と別離。
文学への愛を確認する日々。
そして病との闘い。
この小説を通じて、読者はストーナーの人生を完全に追体験していく。
彼の人生はヒーローものというにはほど遠く、むしろ満ちたりたというものではなかったかもしれない。
しかし、成功に満ちた人生などこの世界にあるのだろうか?
そんな疑問を本書を読んだすべての読者は感じるはずだ。
全篇美しい翻訳文をとおして、ストーナーの人生の悲哀が語られていく。しかし、そこには人生のきらめきがそこかしこに秘められている。
人生は捨てたものじゃない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説(純文学)
- 感想投稿日 : 2020年9月19日
- 読了日 : 2020年9月12日
- 本棚登録日 : 2020年9月19日
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