紙の月 (ハルキ文庫 か 8-2)

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2014年9月13日発売)
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変わりばえのない毎日で、自分が自分の一部であるような感覚を抱いていた梨花。
自分自身の人生の設計図を立てられず、何も実現もできない。
夫婦の間にある違和感もそのままにして慣れてしまう。
単調な日々の中での、満たされない気持ちや認められたい気持ち。
それらを埋め、万能感を感じられるのが、デパートでの買い物や光太との不倫だったんだろう。
その流れの中で、いとも簡単に、横領を繰り返していくー。
あまりにも簡単だから、身近に感じて、些細なことでもきっかけがあれば、明日は我が身みたいな恐ろしさがあった。

単調な日々を送る中での閉塞感って、私にも身に覚えがある。
だけどそれに甘んじて過ごしてきたのは自分自身。
いいこともわるいことも全て自分でやってきたことであって、簡単にリセットできるものではないんだよね。

梨花に関しても、結局は自分の中の問題で、坦々と鬱々としてた気持ちのやり場が、たまたま光太に向けられただけに感じる。
光太から求めたわけではないけどいつのまにかそれが当たり前になった。
だけどそれは健全な関係ではないのは明白で。(お金で囲うってこういうことかと。囲うって表現が的を射ているよねと感心)
アムステルダムのお土産がマスタードとチーズだったっていう描写がなんともいえない梨花と光太の浅はかさを表してていいね。

さて、表題の「紙の月」、気になって調べてみたら「まやかし」や「紙で作ったものだけど本当に信じればそれが本物になる」という意味があるらしい。
この物語においては後者の意味が強いのかな。


読後感は、うわぁ、なんか…スッキリしない…。です。
私の理解力の問題が大いにあると思う。
映画の方も見てみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2019年7月22日
読了日 : 2019年7月22日
本棚登録日 : 2014年9月17日

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