『三つ編み』の作者の第2作。
順風満帆の弁護士のソレーヌは仕事の失敗すなわち顧客を破滅に陥らせたことから燃え尽き症候群になり、医師からボランティアを勧められる。様々な職種の中から選んだのは困窮した女性の避難施設の代書人(Écrivain public)。
百年前、当時の女性としては道を外れた生き方を貫き、この施設の設立のために尽力した救世軍の女性・ブランシュ。
一人で住む部屋を得るというのは一度堕ちてしまうと困難を極める。ソレーヌは目の前のたった一人でも救えるのか。
フランスの女性というと、日本では雑誌で特集を組まれるほど憧れの対象であったりするけれど、施設の女性たち社会から爪はじきにされている。日本でもありそうな事情から滅多になさそうな事情まで施設に身を寄せる理由は様々。
「運も実力のうち」ということばがありますが、運がなければ、出自が恵まれていなければ、普通の生活にも辿り着けないという状況には心が痛みます。
「鍵を手にする、それはなんでもないことではない。人生を手にすることだ。」(P229)
フランスの作品ということで読む前は「言い回しが独特かも?」などと思い込んでいましたが、かなり読みやすいです。著者は小説家、映画監督、脚本家、女優、だそうで、確かに端的かつ正確にイメージを伝える文章が特徴的です。
施設設立のブランシュのパートは、歴史的なものはブランシュが体験したこと感じたこと、ブランシュがどうだったかというところが重点的に描かれていて、歴史的事実というより物語のテイストが強く、それもまた読みやすさにつながっていると感じました。
- 感想投稿日 : 2022年8月26日
- 本棚登録日 : 2022年8月26日
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