妄信 相模原障害者殺傷事件

  • 朝日新聞出版 (2017年6月20日発売)
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感想 : 17
5

一気に読めるような、大変引き込まれる本でした。
(読み終わってすぐ友人に貸したので正確に感想をかけません)
印象に残った点
・亡くなった方々の氏名が一切公開されず、その点で他の重大犯罪と違うということ。その背景には障碍者への根深い社会的差別があるということ。亡くなった方々の氏名が非公開である理由は、「その家族が公表を拒否したため」とされている。被害者家族の中には親族に障碍者がいたことを秘密にしている場合もあった。もちろん、そのような判断の背景には社会的な無理解と差別がある。
・優先保護法の歴史。つい最近まで、私が生まれた後も存在していた法律のこと。国家によって子どもを産めないように同意のない手術をされた人がいたということ。ナチスに遡るまでもなく、戦後日本をみればそこには重大な障碍者差別と異常な人権侵害があったのだと知った。
・職員の人々の労働環境の問題。加害者の行為は全く容認してはならないが、職員の苦悩は確かにあるらしい。入居者に腹が立ったり、職員が少なすぎることで入居者一人一人と向き合う余裕がない、というような。
・青芝の会の活動。
・朝日新聞記者の苦悩について。本書の特色は内容の豊富さだけでなく、事件を追った記者の葛藤も載っていること。亡くなった被害者の氏名が全く明かされなかったために、この事件の取材は特別な困難が伴っていた。その中で取材を行うことはまた、特別に被害者家族とも世論とも摩擦を生み出していた。記者の葛藤も相当あったようだ。

結論としてはかなりの力作と思います。事件の詳細、事件の特殊性、施設職員の思いと苦悩、障碍をもつ当事者の思い、日本社会の問題、そして「共生」とは何か。多様な視点から学ぶことは多く、今後このようなことが起こらないためにはどうするべきなのか示唆に富む一冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月18日
読了日 : 2017年8月18日
本棚登録日 : 2017年8月18日

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