復讐するは我にあり 上 (講談社文庫 さ 7-1)

著者 :
  • 講談社 (1978年12月1日発売)
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感想 : 11
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「観たら読む」は今村昌平監督作品に限っては当時の制作スタッフであった武重邦夫氏が書く回想記のことを指していたのであるが、その中で原作の素晴らしさが述べられていたもので、三段跳びの要領で本作にとうとう到達。むむ、前評判通りスゴイぞ。

なんといっても嬉しいのが映画でも味わった「事件調書を作成する過程に沿った回想記」というスタイルが、そのまま維持されつつしかも原作ではその逆の視点で書いてあるということ。まぁ、この「逆の」はそもそもはこの活字版がスタートなわけなのでより正確に言うと「正の」と呼ぶべくなのであろうが…。

つまりはこういうこと。

原作は最初の殺人事件を起点として、その容疑者を絞り込むために様々な参考人からの集めた証言とその証言を得るための過程をつらつらと綴っていってくれる。その道筋の中で容疑者榎津巌のひととなりが浮き彫りになってくるのであるが、映画版の脚本はその榎津巌が逮捕されて護送されて来るシーンから始まり、その彼に対して自白調書を取るという過程を通してその回想シーンがはさまれていく形をとっている。時には参考人証言とは食い違った容疑者証言のシーンも取り混ぜてあり、絶妙な表裏をなしているのだ。まるで鏡に映る像の表と裏をそれぞれにみせてもらっているような感覚を味わえ、「二度美味しい感」がハンパない。この脚本書いたひともスゴイ。池端俊策氏とのことで、今村版「楢山節考」もこの人。

そんな感じでさらっと上巻を終了、下巻へと手をのばしたところ。

これ読みきったらまた映画観たくなるなぁ…。Netflix確認しとくか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年8月25日
読了日 : 2015年12月14日
本棚登録日 : 2018年11月22日

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