日はまた昇る (新潮文庫)

  • 新潮社 (2003年6月28日発売)
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乾いた大地
照りつける太陽
繰り広げられる群像劇
交錯する価値観にわき上がる血肉
それでも今日もまた陽が昇る

スペインの祭典を中心に、数人の男女によって展開される群像劇。
それぞれの人物は決して交わりあうことはない、けれど惹かれあってしまう不思議な組み合わせ。
傍から見ればものすごく深刻に見える出来事も、当人たちには、ユーモアと喧騒によって溶け出して、数々の酒でかき乱され、あっけないほど簡単に元に戻る。まるですべてが予定調和。これが「許されている」そういうことか。
ひとが生きる大地。実り豊かな大地。
人工と自然は対立しない。人工だって自然から生まれ出たのだから。自堕落(lost)というよりかは、天空から堕ち、この大地に根を下ろしたと言うべきか。不思議とこの作品が印象的なのは、大地とひとの調和があるからか。
揺るがぬ力がしかとひとを支えている。陽が昇れば落ち、落ちれば昇る。始まりが終わりで、終わりが始まり。大地に蒔かれてしまったひとはそこに根を張り這って生きるより他ない。「そう、これでいいのだ」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 物語
感想投稿日 : 2015年3月2日
読了日 : 2015年3月2日
本棚登録日 : 2015年3月2日

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