涙なくしては読めない。
あの東京五輪誘致の舞台裏での猪瀬家族の闘い。
この作品は、猪瀬さんの奥様•ゆり子さんへのレクイエムであり、“素人政治家”の反省文でもあるんだろう。
しかし、この作品が私の心を震えさせたのはそこではない。
猪瀬直樹が生み出してきた作品は何がっても否定出来ない後世に残る名作ばかりだ。
『天皇の影法師』『昭和16年の敗戦』『ミカドの肖像』などなど。
この作品はこれらの名作の“行間”が埋まって行くような感覚になるのだ。
作品に“裏舞台”は必要ないという意見もある。
きっとそれは正しい。
しかし、舞台裏が分かって通われる血もある。
名作の“行間”にゆり子さんがいた。
作品の中で猪瀬さんは夏目漱石の『こころ』に言及している。
「『こころ』には生活がない」と。
この作品は猪瀬直樹という作品に「生活」を流し込む作業だったのではないか。
結果、猪瀬直樹という人物の“虚像”が晴れていった。
そうなることを祈る。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年11月3日
- 読了日 : 2014年11月3日
- 本棚登録日 : 2014年10月31日
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