スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))

  • 早川書房 (1987年4月15日発売)
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本棚登録 : 293
感想 : 24
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スマイリー三部作完結編で、旧ソ連の宿敵〝カーラ〟との最終的決着までを描く。重厚な筆致は更に磨きが掛けられており、ル・カレ独自の世界がゆっくりと始動する。前作の漠然とした分かりにくさは消え、より引き締まった構成ではあるが、集中力を欠くと挫折しかねない。タイトル通り、物語はスマイリーに主軸を置いている。かつての仲間が犠牲となっていく非情な諜報戦のただ中で、老体に鞭打ちながら真相を求めて歩む孤独な後ろ姿は、影の存在でありつつも、自国他国問わず真っ先に国家の使い捨ての駒となるスパイの悲哀を物語っている。
冷たい怒りを抑えつつも、或る瞬間には滲み出てしまう吐露に、終わりなき闘いの不毛ぶりが表れている。実体がほとんど明らかにされていなかった〝カーラ〟が、ようやく姿を現す終盤のシーンは、本作のみならず三部作全体を通してのクライマックスであろう。「勝つ」ためには、自らも薄汚い手段を取らざるを得なかったスマイリーに去来する思いは、苦く空しい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: スパイ 冒険小説
感想投稿日 : 2016年11月30日
読了日 : 2016年11月30日
本棚登録日 : 2016年11月30日

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