後鳥羽伝説殺人事件 (角川文庫 う 1-1)

著者 :
  • KADOKAWA (1985年1月17日発売)
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本棚登録 : 610
感想 : 53

【概略】
 後鳥羽法皇が隠岐に流された道順を追って旅行していた正法寺美也子と浅見祐子は、その旅先の旅館で土砂崩れに遭い、正法寺美也子は記憶喪失に、浅見祐子は命を失ってしまった。8年後、失った記憶を取り戻すべく正法寺美也子は再びそのルートを辿る。その道中、自身の記憶の闇を深く刺激する一冊の本と出会う。喜ぶ正法寺美也子、だがしかし、彼女はその日の午後、広島県の国鉄三次駅公開の跨線橋で絞殺死体となって発見される。本はなくなっていた。謎の解明に挑むものの、壁に阻まれる警察に、亡き浅見祐子の兄・浅見光彦が捜査協力を申し出る。浅見光彦が紙面に登場した初の旅情シリーズ。

年月日不詳 読了
2023年01月07日 読了
【書評】
 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で承久の乱からの隠岐への島流しというシーンを観て、久しぶりに読んでみようと手に取ってみた。平易で明解、リズミカルな文章、本当に読みやすい。
 読み返したのはもう何度目になるかわからないけれど、今回はちゃんと作者が置いた布石(今は伏線というのかな)に気づくことができた。ある意味、加齢による記憶力低下は、何度も読んだ本を、何度も楽しませてくれるね。「あれ?ひょっとしたらこの人が犯人じゃね?」なんてことを思いながら読むことができるのだからね。
 いやぁ、時代を感じさせるね。まだJRが国鉄だった時代の話だよ(本書が世に出たのは1985年1月で、国鉄民営化は1987年4月)。
 敬愛する浅見光彦も、若さがあふれてる!妹がとんでもない非業な死を迎えてしまい、それにまつわる事件に関与しているとはいえ、タバコを吸ったり、発言の尖り具合など、やんちゃな空気感が出てるね。こういう浅見光彦も、人間味があって、いい。
 本書では、「実は史実のルートは影武者にまわらせ、後鳥羽法皇はこちらのルートを通ったのではないか?」という伝説を下敷きにして話を広げている。その土地その土地は、そういった「かもしれない」に、色んな想いを乗っける。内田康夫さんの作品は、単なる謎解きではなく、そういった多種多様の人間が描かれているのがいいよね。
 ちなみに「あれ?後鳥羽上皇じゃなかったっけ?後鳥羽法皇だったっけ?」なんて思って確認した。天皇が皇位を譲ると上皇になるよね。今の上皇陛下がそうだよね。その上皇が出家をすると法皇になる。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも、最後は頭を丸めていたね。ナレーションではその時も「後鳥羽上皇」と呼ばれてたけどね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サスペンス・ミステリー
感想投稿日 : 2023年1月8日
読了日 : 2023年1月7日
本棚登録日 : 2023年1月8日

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