想像力をかき立てるのに、多くの言葉はいらないと知らされた。
限りなく虚飾をそぎ落とした物語だ。
こてこてと飾り立てた文章が多い中、山田太一の書く文章はこの上なくシンプルだ。
この簡素な文体がこの物語の味わいを決定づけている。
この作家の本職がシナリオライターであることと無関係ではないだろう。
妻子と別れ、一人で仕事部屋として使っていたマンションに住む40代のシナリオライターが主人公だ。
環八沿いのマンションは、夜になると閑散として人気がない。この静かな舞台がとても心地よい。
彼が幼少期を過ごした浅草をたまたま訪れたとき、やはり幼少期になくなった彼の両親と出会うことから、その夏の物語が始まる。
幽玄な物語はやがて思いも知らない方向へ舵を切っていく。
暑い夏の夜中に読みたい一冊だ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2018年8月12日
- 読了日 : 2018年8月12日
- 本棚登録日 : 2018年8月12日
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