著者がユニクロを取り上げるのは、これが二度目。前作「ユニクロ帝国の光と影」では名誉毀損だと訴えられるもユニクロ側の敗訴。にも拘らず、柳井社長は雑誌のインタビューで著者に向けて挑発発言をする。「悪口を言っている人間はうちの会社で働いてみればいい」。
この発言に激怒した著者は、「柳井社長からの"招待状"」と解釈し、合法的に姓を変え(妻と離婚し再婚、そして妻の姓を名乗る)、弁護士にも相談し、虚偽のない履歴書を作成し、2015年10月から翌年末まで、幕張新都心・ららぽーと豊洲・新宿ビックロ各店で時給約千円・交通費ナシのバイトとして潜入勤務。
そこで見えてきた超躍進企業は、柳井社長の朝令暮改はいうまでもなく、人件費を削らないと倒産することを煽り、それを鵜呑みにする社員。その傍らにはファーストリテイリングの好業績を報じる日経が置かれていると言うのに。また、殺到する年2回の感謝際の対応に大混乱する現場。刃折れ矢尽き果て次々と脱落していくスタッフ。慢性的な人員不足から「お願いです!!」と悲鳴のような出勤要請が店長からLINEで送られてくる日々。これらの描写には鬼気迫るものがあり、そして、著者の怒りはカンボジアの工場を取材するに至り、ついに沸点を超える…。
読み進むにつれ、本書はブラック企業の実録告発という社会派ノンフィクションの域を遥かに超え、フリージャーナリスト横田増生が柳井教に毒された巨艦ユニクロ帝国にペンひとつで闘いを果敢に挑む魂の書となっていることに気づかされる。
著者は最後にこう語る。
疲弊感漂う販売現場を知るべきは柳井氏である。彼こそいっそのこと潜入してみてはどうか。それが、ユニクロにとっての「働き方改革」の第一歩になるかもしれないと。
頭痛クラクラの迫真ルポおススメです。
- 感想投稿日 : 2018年1月14日
- 読了日 : 2018年1月14日
- 本棚登録日 : 2018年1月14日
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