人は退屈につきまとわれる。この退屈の苦しみを克服するにはどうしたらいいのか。
このテーマを、パスカル、ルソー、ラッセル、ハイデッカー、ユクスキュル、マルクス、ジル・ドュルーズら過去の哲学者たちの論考を援用しながら考察した哲学書。
パスカルが信仰、ラッセルが熱意、ハイデッカーが自由に気づきそれに飛び込むこと、とした答えを批判的に読み解きながら、本書の答えは浪費すること=贅沢をすること、楽しむこと(「浪費」「贅沢」の意味は一般に使われている用法と異なるので、本書の定義を理解することが必要)、であるというのは、先人たちの結論と同様、やや肩透かしな感じがある。
特に、楽しむことが、物ではなく記号を消費している現代の消費社会、そのために商品が頻繁過ぎるモデルチェンジを余儀なくされ雇用の不安定に繋がっている問題をどう解決に向かわせるのかについては、もっと考察と記述が欲しかった。
それでも、人間の課題に誠実に向き合い、思考を重ねた著作であることがよく伝わってきて、とても読み応えがあった。残された課題も読者と今後に開かれているのだと思う。
追加された付録も説得力があり興味深かった。今後の著作も読んでいきたい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年8月25日
- 読了日 : 2023年8月25日
- 本棚登録日 : 2023年8月25日
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